職業柄、色々な玩具店の売り場を見に行くことが多い。企画の仕事も全ては現場を見て、新しい事実を探すことから始まる。
この写真は、5年近く前に、そんな調査で訪れた津田沼駅近くで撮影したものだ。現在は、全く異なるビルに生まれ変わっている。
実はこのビル、パッと見てなんとなく気づいたと思うが、元OIOIのビルである。
画像加工は全くしていない。
撤退したからなのだろうが、カラーはそのままに、店のロゴだけが全て消失していた。
でも、これだけで、OIOI感というものが感じられた。
このビルにはこんなにもOIOI感はあるにも関わらず、実体としてのOIOIはもうここにない。
つまり私達が感じているOIOI感の正体とは、店舗のロゴではなく、ビルの色面構成なのかもしれない。
私達の物事の認識とはそれほどまでに曖昧なのだ。
これを見てまず思い出したのが、中村政人によるコンビニのネオンのみを本物に限りなく近く再現して抽出した作品だ。
こちらも色面だけだが、「これはセブンイレブンだとか」「これはファミリーマートだ」といった具体的なコンビニのイメージが即座に立ち上がる。
具体的なイメージがはっきりと頭の中に立ち上がっているのにも関わらず、いずれのネオンもロゴが無く「からっぽ」なものになっている。
この脳内イメージと目の前に現れている状況とのギャップが、「面白さ」を引き起こしているのではないか。
作品固有のメッセージは置いておいて、「からっぽ」さを利用した表現方法は、人間の記憶とイメージ想起のメカニズムという視点から、とても興味深い。