日本のサービスは「世界一」だと言われているが、それはある意味コストを度外視した「サービスの強要」によって極めて危ういバランスによって成り立っている。
昨今よく聞く「モンスター○○」みたいな人たちは、そのサービスにかかるコストには意識がいっていなかったりする。
人間の行動は基本的に、「報酬」によって操作される。報酬というとネガティブなイメージが付きまとうかもしれないが、極端に言えば「ありがとう」という言葉かけだって報酬の一つなので、その言葉の指す範囲はとても広く、複雑だ。
さて、上手く人にアクションを起こさせるためには、この「報酬」を与えるシステムをどうやってデザインするかが重要なわけだけど、いくつかヒントになる例を見つけたので紹介したい。
●事例1:お好み焼き屋
この店舗では「お片づけ割引」というサービスを実施している。
食事後に鉄板にこびり付いた汚れをコテで掃除し、皿・箸・コップをまとめて店員のチェックを受けて認めてもらうと、50円割引がされるというものだ。
「50円割引」という報酬(これはごくわずかな額ではあるが)で、「きれいに片付ける」という客の行動を引き出している。
●事例2:トイレッツ
セガが開発した男性用便器のエンターテインメントサービス。過去にも広告キャンペーンで似たようなアイデアはあったが、便器に的を付け、そこを狙って排便させる。的の水量・水圧によって、ゲームができるという仕組みで、尿の飛沫防止によってトイレの清潔さを保つ効果がある。
よく、駅のトイレなどには注意書きがあるが、ゲームにすることで、行動を操作するという例だ。
●事例3:ゴミ箱バスケット
nikeがブラジルでやったキャンペーン。街中のゴミ箱にnikeのロゴ入りのバスケットゴールをつけた。これによって、ゴミを捨てることが遊びになり、街中のポイ捨てが減ったという。
普段ポイ捨てしてしまう人でさえも、ゴミをゴミ箱にきちんと捨てさせる(きっとゴミをちゃんと捨てたという意識は無いだろうが)行動を引き起こしている。
この3つの事例から分かることは、
「ここまでやらないと(報酬を与えないと)人間は行動を起こさない」
「報酬を上手く設計することで人間の行動を操作することができる」
という二つの事実だ。
これはある意味普段声高に倫理を叫ぶ人にとっては、絶望にも近い事実かもしれないが、
本人は無意識かもしれないが、報酬の設計によって人の行動を不快感無く促すことができるという事実は、「問題解決者」の視点から見れば、大きな希望になると思う。