2011/08/15

クオリティを知る

「良いものを見たほうが良い」という話は良く言われる事だし、自分でもたまに話したりする。
でも、実際に話を聞かされた方はリアリティを感じないかもしれない。

少し自分の話をしよう。多少でも行動を起こすきっかけになれればいいなと思う。


小学五年生の時に、ひょんなきっかけで吹奏楽部に入部した。
生まれて初めて託された楽器は、Euphoniumだった。
その年から赴任した音楽の先生は、僕達に吹奏楽のために書かれたコンサート曲をくれ、練習を始めることとなった。

ある日の放課後、先生と話をしていた時に「プロの演奏を聞いてみると良い」と教えてくれた。
たぶんこれが、自分のお金で始めて買ったCDだと思う。かなり苦労して探した(結局取り寄せた)けど、なんとか見つけた。東京佼成ウインドオーケストラというプロの吹奏楽団が、自分たちがやっている曲を演奏したCDだ。

初めてこのCDを聴いて、額然としたあの日のことはよく覚えている。
自分たちと同じ楽譜、同じ楽器(厳密にはこれは違い、遥かにグレードの高いモノを彼らは使っていたわけだけど、本質では無いのでこう書く)なのに、こんなに音が違うのかと。
何故、自分(たち)はこの音が出せないんだろう。
何が違うのか、とかなり真剣に考えはじめた。
その日から練習方法等が全て変わったし、上達の度合いもかなり変化したと思う。

これが、自分の「クオリティ」というものを知る初めての体験だった。
これまで上手い絵画等を見ても、もちろん自分は絵も描けないしそもそも描いたことが無いし、自分とは全く関係のない世界、地続きで無い世界だと思っていた。
ところがこのCDを聴いた時、自分たちと彼らとはかなりの距離はあるけれど、全くの別世界のものではなく、一つの直線上にある地続きのものである事もまた分かった。
たぶん、同じ楽譜・同じ楽器という共通したフォーマットがあったからだろう。

「クオリティ」があるものを、自分と地続きのものとして捉えるというのは、ゴールと自分の居場所を定義するということだ。それをすることで、ゴールに向かうためにどうすればいいかという思考に、初めて向かうことができる。

自分が小学校の時に受けた教育で最も貴重なものが、この先生の「プロの演奏を聴いてみると良い」という言葉だったと今になって思う。

この体験のおかげで今の自分がある。

ここで言いたかったことは、良いものをただ見ても意味が無い。良いものは何が良いのか、どうして良いと思うのか、自分と(自分の目指すイメージと)比べてどうなのか。を考えることが大切だということだ。
まだ夏休みも少しある。
是非様々なものに触れて、自分の抱く理想の「クオリティ」というものを見出して欲しい。