数日ほど実家に帰っていたのだが、去年、高校の最寄り駅に美味しいかき氷の店が出来たのを知って以来、帰省の度に寄るようにしている。
いつの間にか週末は1時間ほど並ぶ人気店になってしまったのだが、平日かつ雨だったため、すんなり入ることができた。
その店がなぜ人気かというと、日光の良い氷を使っているというだけでなく、食感が他のかき氷店と明らかに異なるからだ。
普通のかき氷は、ジャリジャリとした砕かれた氷を噛んで味わう食べ物というイメージがあると思うが、ここのかき氷は違う。
氷が薄くスライスされたような形で削られており、口に入れるとフワっと溶ける。味わうのに噛むという行為は必要ない。
この、フワっという食感を味わうために、みんな並ぶのだ。
いままでのかき氷のイメージとのギャップに人は喜び、美味しいと感じる。
新しいものとは基本的に既存のものとの違和感によって生み出される。「違い」が「価値」をつくるのだ。
つまり新しい価値を生み出すには、日常の違和感に対して敏感になる必要がある。
前述のかき氷は、氷を削る刃を変え、食感を変えることで違い=価値をつくることに成功している。
どこで違いを見つけるべきか。かき氷の場合は、氷のクオリティや蜜のクオリティより、削られた氷の形状=刃がクリティカルだったということだ。
これは、新しい価値を生み出す際に、何を問題とするかが最も大切だということを示している。
問題の設定の仕方を間違えると、途端にうまく行かなくなる。
下の写真は、数年前にコンビニで見つけて購入した「生キャラメルグミ」という食べ物だ。
当時、北海道の花畑牧場をきっかけに生キャラメルがブームになっていたことを受けて、「味は生キャラメルで食感はグミ」という世の中にある生キャラメルとは「違いのある」商品として発売された。人は経験で味から食感を予測する。生キャラメルの味から予想した食感と異なるグミの食感は、「気持ち悪い」という感覚になって現れた。
知覚研究者としては興味深い事例だったが、「みんなの好きなグミ(ソフトキャンディ)を人気の生キャラメル味で出せば良い」という課題設定が間違っていたため、この商品はしばらくするとコンビニの棚から消えてしまった。
繰り返すが、新しさにとって「違和感」を孕むことは非常に大切だが、どこに「違和感」を出すかが全ての肝だ。
そして、その判断を誤らないために、ぼくらはあらゆることから学ぶ必要がある。