2011/08/23

失われた感覚

玩具業界では、秋には年末のクリスマス商戦に向けて、新商品の発売が目白押しになってくるわけだが、もうこの時期になると、大抵の準備は終わっているので、慌てて何かに追われるということは無い。
最後の準備として今日は、新商品発売を知らせる手紙を一通ずつ手書きで書いていた。

ある編集者に向けて書いていた時、住所の「編」の最後の部分の書き順を間違えて、
本来13画目で書く横棒より先に14画目の縦棒を描いてしまった(画像)。
間違えたと言っても、ただ順番を間違えただけなので、「はいはいじゃあ横棒書きますよー」等と思っていたのだが、
急に横棒と縦棒どちらが二本だったから全くわからなくなってしまった。

いつもは問題無く書けるのに急に合っているか不安になって手が動かない。まさに字の形を脳が「失ってしまった」のだ。
これは読む時と書く時では全く違うプロセスが行われている事を意味する。
これまで、文字の形を視覚的に記憶していたと思っていたのだが、どうやら、文字の形を手の動き(ストローク)で覚えているようだ。
動きの順番が狂うと途端に文字の形が全くわからなくなってしまう。

冷静に考えてみると、以前紹介した「書字スリップ」のように書字行為は運動企画(身体を動かす手順)によってなされるので、ある意味当たり前の現象なのだけれど、文字の形が手順によって記憶と紐付けられているという事実を実感できた、とても奇妙な体験であった。