2011/08/09

欲求の源泉

先日、たまたま、テレビの5分朗読番組で見かけた絵本が素晴らしかったので、すぐさまAmazonで注文した。それが届き、これまでパラパラと眺めただけだったのだが、ようやくきちんと読めた。
ひがしちから著「ぼくのかえりみち」っていうタイトルの絵本だ。

簡単に内容を説明すると、学校の帰り道に主人公の少年が「白い線の上しか歩いちゃダメルール」を厳格に執行しながら、とにかく帰るという話だ。特に素晴らしいのは、時々、少年のイメージで、白い線以外は深い谷になっている絵が入るところ。誰しも一度は、やったことのある妄想を、鮮度そのままにパッケージにしている。





この絵本で思い出したのは、9年前のnikeコマーシャルでたしかカンヌを獲った"shadow running"というタイトルのTVCFで、これも「影の上しか走ってはいけない」という自分ルールを厳格に守る面白さがある。Nike Shade Running Wieden + Kennedy Portland 2002

今書いたようなこと、つまり「妄想に基づくルールを厳格に死守する」ことこそがまさに「子どもの想像力」って呼べるんじゃないかと、自分は思っている。

大人の考える「子どもの想像力を刺激する」ものは大抵この視点が抜け落ちている。
仕事柄、色々な海外・国内問わず「おしゃれで評価の高い」ブロックや知育玩具を見て、実際に子供たちの遊ぶ様子を丹念に観察したりしているんだけれど、こちらが予想した以上に、興味を示さず遊ばなかった(全く興味を示さない、扱いにくくて遊びが長続きしないなど)のは、結構衝撃的だった。
大人がいいなって思う遊びやデザインと、子どもが実際にハマるものは明らかに違う。
その違いが何なのかはまだ言語化出来ていないけど、それを実際に具現化するのが自分の仕事(本業)なので、それは実際の商品で示していこうと思う。

親や大人からみたら、「くだらない」と一蹴してしまうものにこそ、子どもの本音や欲求が詰まっている。下らないと思っているものが、それを纏うことに成功しているという事実を、「おしゃれな玩具」を崇める大人たちは、どう見ているのだろうか。